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横手演奏会を終えて

 2013年11月17日、秋田県横手市の秋田ふるさと村ドーム劇場で開催された横手フィルハーモニー管弦楽団第6回定期演奏会に、武蔵野合唱団からおよそ100名が参加しました。

「秀麗無比なる 鳥海山よ
 狂爛吼え立つ 男鹿半島よ
 神秘の十和田は 田沢と共に
 世界に名を得し 誇りの湖水
 山水皆これ 詩の国 秋田」

 「大いなる秋田」の第3楽章に挿入された「秋田県民歌」の歌詞です。この秋田の風光をストレートに讃えた歌が、どうして東京の合唱団である私たちの胸をこんなにも高鳴らせ、目頭を熱くさせるのだろう?一年以上前から準備を進めてくださった横手フィルの皆さんの温かいおもてなし、共演した横手市の子供たちの歌声、そしてなによりも演奏会場を満たした秋田の皆さんのこの歌に対する思い、それらすべてが私たちの心を打ったとしか表現できません。なによりも多くの心を贈ってもらったのは私たちの方だった。今回はそんな演奏会でした。

 武蔵野のメンバーのほとんどは前日の16日に横手入り。2〜3日前に降った初雪が全国ニュースで取り上げられる程の大雪となり、横手は一面の雪化粧で我々を迎えてくれました。
 15:00からは演奏会場である秋田ふるさと村ドーム劇場を使ってのリハーサル。事前に何度も合わせる事のできない今回の演奏会では、この前日リーハーサルが翌日の演奏を左右する重要な合わせになります。リハーサルは緊張感の漂う中にも楽しいものとなりました。
 リハーサル中、児童合唱の子供たちに注意が。「もっと身体を客席の方に向けましょう。」今回、児童合唱は舞台の上手で歌います。指揮を見るためには自然と内側を見ざるを得ないのですが、それが内側を見過ぎているというのです。しかし、子供たちがそうなるのには訳がありました。子供たちのすぐ隣で歌っているのは武蔵野の男声陣です。子供たちには男声の歌声や表情が気になってしかたがなかったようです。自分たちのお父さんやおじいさんのような年齢の大人がこんなに必死になって歌う姿を見るのは初めてだったのでしょう。武蔵野の歌うカルミナブラーナは、その歌の内容以上に、見た目のインパクトの方が子供たちには刺激が強すぎたようです。
 リハーサル終了後、その児童合唱の皆さんから嬉しい贈り物がありました。子供たちひとりひとりのメッセージが手書きされたしおりが武蔵野のメンバーに手渡されました。
 書かれている言葉は、
 『今度はスイカのおいしい季節にも来てくださいね』
 『またいつか“カルミナブラーナ”と、“大いなる秋田”をいっしょに歌うきかいがあるといいです。』など。皆さんの心のこもった言葉は、今回のなによりの記念品です。
 武蔵野からは返礼として、児童合唱と横手フィルハーモニーコーラスの皆さんへ、ベートーヴェンの第九の楽譜をお贈りしました。これは「皆さんと私たちはもうすでに『歌の仲間』です。この曲をいつか一緒に歌いましょう。」という私たちのメッセージです。この子供たちが一緒に第九を歌えるようになるまで、声は無理としても同じ顔と気持ちで歌い続けたいものです。
 リハーサルの開場を出た後、『明日に備えるために』町へ繰り出した合唱団は、そこでも横手の皆さんの温かい言葉に出会いました。一体何人が「明日はがんばってくださいね」と声をかけられた事でしょう。なぜ私たちが東京の合唱団だとわかったかという疑問はさておいて、横手の皆さんとこういう形でふれあえた事に対する喜びと、大きな声で騒いでしまった事へのお詫びの気持ちでいっぱいの夜でした。


 翌17日の本番当日、13:00の開場とともに客席はほぼ満員。第1ステージの「大いなる秋田」は、天野正道先生の編曲による管弦楽版が初めて演奏されるという事もあってか、しわぶきひとつない観客が待ち構えていました。秋田県民ではない私たちだから特に感じる事なのでしょうが、この曲では客席から伝わってくる熱量が半端ではないのです。もちろんそれに萎縮するような武蔵野だったらこの地で演奏させてもらう意味がありません。その熱量を自分たちのエネルギーに変えて歌うだけの準備と心構えは東京から持って来たと自負しています。
 そしてこの文の冒頭で掲げた第3楽章の終了後には客席から思わず拍手が。これはきっとたぶん、この曲が演奏されるどの演奏会でも同じように拍手がわき起こるのではないでしょう。「秋田県民歌」がいかに愛されているかが伝わってきて、演奏をさらにヒートアップさせました。合唱はこの段階でエネルギーを第2ステージに温存させておこうという気持ちは微塵もなかったように思います。
 案の定、第1ステージ終了後には、「1ステは良い演奏でした。でもこのテンションのままカルミナに入ったら、後半が崩壊する危険があります。いったん気持ちを落ち着けましょう。」という、松井先生から指示の伝令が飛びました。
 第2ステージの「カルミナ・ブラーナ」は、秋田で合唱付きの管弦楽版が演奏されるのは初めてとの事。初めて生でカルミナを聴いた方も多かった事でしょう。児童合唱の方のお友達だったのでしょうか、客席最前列あたりで、ソリスト・首藤玲奈先生のソプラノの歌声を目を大きく見開いて聴き入っている女の子の表情が忘れられません。松井先生の指示はあったものの、演奏は第1ステージに増して熱のこもったものだったと思います。ただ、後半になるにつれて、一番テンションを開放したのは指揮の松井先生ご本人だったのではないでしょうか?最後のfffのフェルマータの長い事長い事!合唱は普段の倍は息継ぎをしたと思います。

 演奏終了後、横手フィルの皆さんが設けてくださったレセプションは大変気持ちよいものでした。武蔵野合唱団からは横手フィルの皆さんへ盃をプレゼント。書かれている文字は武蔵野が愛する「乾杯の歌」の歌詞です。
 横手の空気にはきっと「心の酒」が混じっているのでしょう。私たちを心地よく酔わせてくれました。その酒量はこんな小さな盃ではとても受け止めきれない程でした。  
 今回の貴重な経験を与えてくださった、横手フィル、横手フィルハーモニーコーラス、横手南中合唱部、雄物川北小合唱部、朝倉ジュニアコーラス、ソリストの方々、またステージマネージングを手伝ってくださった皆様、そして横手と武蔵野を結びつけてくださった松井慶太先生に心からの感謝を申し上げます。
 最後に手前味噌になる事をお許しいただければ、100人のメンバーを率いて無事に演奏旅行を成功させた当団のスタッフにも感謝の拍手を贈りたいと思います。

武蔵野あらかると

 

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