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武蔵野合唱団第49回定期演奏会

今から6年前の2010年10月、武蔵野合唱団は第43回定期演奏会において下野竜也先生をお招きしてドヴォルザーク「スターバト・マーテル」を演奏しました。初共演となったこの時の演奏は、武蔵野の男声を代表する猛者、故Y氏をして「過去最高なのではないか」と言わしめた素晴らしい内容になりました。

興奮冷めやらぬ中で行われたレセプションでのこと。下野先生はスピーチの際「また一緒にやりましょう」とは最後までおっしゃいませんでした。筆者にはそれが「この出会いは安易に次の共演を約束するような安っぽいものではない。お互いが自分の道を真剣に歩む中でその道が交わることがきっとある筈だ。その時は是非一緒にやろう!」とおっしゃっているように感じました。そして下野先生という指揮者への信頼を一層篤いものにしたのです。

その機会はやってきました。去る2016年11月19日(土)、私達は6年ぶりに下野先生をお招きして第49回定期演奏会を開催しました。会場は6年前と同じ東京芸術劇場コンサートホール。オーケストラは下野先生のお引き合わせで読売日本交響楽団を招聘させていただくという豪華さ。各方面のご協力をいただき前半プログラムのヴィヴァルディ「グローリア」のソリストには小林沙羅氏、佐藤優子氏、平山莉奈氏という若手実力派の女声陣を、メインプログラムの「ベルシャザールの饗宴」には活躍めざましい青山貴氏をキャスティングすることができたことも大変幸運でした。

グロリア_ソリスト青山先生

全く対照的な2曲を演奏するにあたって様々な不安がありましたが、下野竜也先生の説得力抜群のタクトに導かれ、時間を忘れるような素晴らしい数回の練習を経て本番を迎えました。

「グローリア」では読響の素晴らしいアンサンブルとビロードのようい美しい女声ソリスト3人の声に寄り添うような演奏を心掛けましたが、客席にはどう届いていたでしょうか。客席にいた当団関係者は「大人数で歌っているとは思えないほど軽やかでまろやかで一つにまとまって聞こえていた」と評してくれましたが、そうであればこの曲を取り上げた意味は大いにありました。

第49回定演そしてメインステージの「ベルシャザールの饗宴」。解釈は様々だと思いますが、武蔵野史上最高に難しい曲と言っても過言ではない難敵でした。難しい音程、広い音域、変拍子、ドッペルコーラス、一部は少人数コーラス、そして慣れない「英語」。特に英語の発音に関しては当初からディクションの権威でいらっしゃる三ヶ尻正先生をお招きして取り組みましたが、なかなか成果は上がりません。予定回数を超えて練習にお越しいただき、様々なトレーニングツール(楽しすぎてここには書けません)を使って最後まで粘り強くご指導いただいた三ヶ尻先生には感謝の言葉しかありません。

「ベルシャザールの饗宴」はゴージャスな読響の音にまさにぴったり!本番二日前のオケ合わせの段階で既に感動の面もちの私達に下野先生は軽く一言、「本番はこの5倍ですよ。」それは誇張でもなんでもなく、読響特有の煌びやかな音がコンサートホールの隅々まで響きわたります。そして私達も下野先生のタクトに食らいつき貪欲に楽しみます。あれほど苦しんだ音程や変拍子がお友達になってくれた、というのは言い過ぎでしょうか。

フィナーレでオーケストラが大音量でF-durを鳴らす中に、合唱団の頭の上のパイプオルガンから降ってくるように音が加わった時は、コンサートホールの空間が金色に染まったような錯覚を覚えました。何という素晴らしい時間。

さて、終演後のレセプションで今回は下野先生が何とおっしゃったか、それはここには書きません。知りたい方は、是非武蔵野合唱団の門を叩いて下さい。

武蔵野あらかると