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よこての第九

 秋田県横手市で11月6日、地元のアマチュアオーケストラ、横手フィルハーモニー管弦楽団(横手フィル)の第9回定期演奏会が開かれ、公募の市民合唱団、横手フィルハーモニーコーラス(YPC)に私たち武蔵野合唱団有志も加えていただき、ベートーヴェン交響曲第9番を演奏しました。「県南」と呼ばれるこの地域では初めての「第九」公演でもあり、入場券は完売。演奏が終わると、横手市民会館大ホールを埋めた客席から「ブラヴォー」「ありがとう」と熱い拍手が寄せられました。

 横手と武蔵野合唱団を結びつけたのは、指揮者の松井慶太先生です。横手フィルを第1回定演から指導している松井先生が「秋田に意欲的なアマチュアオケがある」と紹介してくださったのがきっかけとなり、3年前の2013年11月、横手フィル第6回定期で最初の共演が実現。横手の皆さんとともにオルフ「カルミナ・ブラーナ」、「大いなる秋田」を歌い上げました。このとき共演した子供たちに「いつか一緒に歌おうね」と「第九」の楽譜を贈ったのが、今回の演奏会に結びついたのです。

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 翌春の2014年4月、横手の女性7人が第九の楽譜を手に集まり、発音練習を始めました。まだ、公演の予定もありませんでした。経験者もほとんどいない、発音も音程も難しい……、それでも「いつかやりたい」という思いを抑えることはできなかったそうです。「一緒にやろうよ」「歌ってみたいな」……エネルギーはジワジワと広がり、仲間も徐々に増えました。横手フィル定期「第九」公演が決まると、YPCの仲間は80人を超すまでになりました。

 「自分の頭に畳み込むように」「しもう(染みる)まで」練習を重ねて、「特別すごくとか、美しくとか、カッコよくとか、オシャレにとか考えずに、ただひたすら真面目に第九を歌う。これが私たち」。そんなYPCの皆さんに、松井先生は「冬を堪え忍んでいる深さがある。1人1人の意志が強いし、大きな声で隠れようとしない。」と話すほどの惚れ込みようです。

 横手フィルも「演奏できる有名曲」ではなく「演奏したい難曲」に挑む心意気が身上。この両者のコラボだからこそ、「年末だから第九」「どこにでもある第九」ではなく、「今、ここでしかない第九」(松井先生)が横手市民会館大ホールに満ちたのです。

 そんな横手の皆さんに出会い、私たちも変わりました。演奏会がなくても横手に通う団員Aや団員Bがいたり、横手からお客さんとあらば仕事をなげうって駆けつける団員Cや団員Dがいたり。ただ、横手焼きそばやいぶりがっこが食べたい、日本酒が飲みたい、というだけではないのです。「横手」の文字が目に入ると、なんだかソワソワしてしまうのです。

 横手の皆さんには今回、1人1人にヴェルディ「レクイエム」の定期演奏会CDを贈りました。「次は何年後に共演できるだろう」。横手で、また新しい物語が紡がれるのを楽しみにしています。

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