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山田和樹マーラー・ツィクルス第8回『千人の交響曲』演奏会を終えて

「人はなぜ死んでしまうのか」

山田和樹先生は今年3月の合宿で、そして初日6月3日のゲネプロで再び、私たちに突き付けた言葉です。

60年以上に亘り活動を続けてきた武蔵野合唱団。結果、残念ながら歴史を創ってきた“先達”を見送る場面にも、数多く立ち会ってきました。
そうして旅立った彼ら彼女らを「Elysium(天上の楽園)合唱団」と呼び、天国で酒を酌み交わし、歌い合う姿を思い浮かべ、偲んでいます。

no1生死を超えた、甘美な瞬間を讃えるようなマーラー『千人の交響曲』。
私たちがこの曲に立ち向かうとき、第二部の終末の如く「上へ上へ」と旅立った、この「Elysium合唱団」から目を背けることはできません。
しかし山田先生からすれば、まだまだその思いが「音になって」いなかったのでしょう。

私たちと『千人の交響曲』のご縁は、山田一雄先生指揮の新交響楽団定期演奏会(1986年4月、東京文化会館)に始まり、全ヨーロッパで中継された、小林研一郎先生指揮のハンガリー国立交響楽団(1996年5月、第4回ハンガリー演奏旅行、ブダペスト・スポーツセンター)へと続きます。

そして迎えた小林先生指揮、日本フィルハーモニー交響楽団の第500回定期演奏会(1998年5月、サントリーホール)。
この公演へ向けた練習で初めて山田和樹先生を合唱指揮者に迎え、現在に至ります。

※因みにこの公演では、山田先生が合唱団員として、一緒に舞台に立たれました。私たちが共に歌った、唯一の機会です。

それから20年目の今年、ついに迎えた山田先生との『千人』、高鳴る思いで迎えた今年3月25日(土)~26日(日)の合宿。
マエストロの指揮の下、「明日声が枯れて歌えなくなってもいい」と、一度は一つになった私たちでした。
しかし、その後は音程や発音、暗譜に追われ(どれも本当に大切なことなのですが…)、焦りと不安ばかりで、あっという間に本番目前となります。

本番の週5月30日(火)には、マエストロ指揮の下、杉並公会堂グランサロンにて栗友会合唱団、東京少年少女合唱隊と、最初で最後の合同練習を行いました。
「歌ではなく、歌詞を聞かせて」「割り切れないものがあっていい」「もっとEwig(永遠に)」。
次々にマエストロの指示が飛び、最後には「神秘の合唱の冒頭(※)、自分なりに訳してくるように。オケ合わせまでの宿題!」。
まるで“思いが全然こもってない”と言わんばかりに。

※Alles Vergaengliche Ist nur ein Gleichnis;
(すべての過ぎゆくものは 比喩にすぎない=プログラムより)

6月3日(土)初日のゲネプロ。no2
「子音が地球には届いているけど宇宙には届いていない」「想定内なんだ」「ボクを驚かせてほしい」……マエストロのダメ出しが続き、第2部最後の「神秘の合唱」を前に、冒頭の「人はなぜ死んじゃうんだ!」と、また一括。

そうして迎えた本番、地響きのようなオルガンで始まった『千人の交響曲』。
日本フィルハーモニー交響楽団の、時に猛々しく時に慈愛に満ちた演奏に加え、林正子さん(S)、田崎尚美さん(S)、清水華澄さん(A)、高橋華子さん(A)、西村悟さん(T)、小森輝彦さん(Br)、妻屋秀和さん(B)の豊かな歌声に導かれてゆきます。

奔放に突っ走りがちな私たちを栗友会合唱団の皆様がつなぎとめてくださり、東京少年少女合唱隊の歌声で清められました。
第2部終盤には3階席から小林沙羅さん(S)の歌声にすべてを許され、2階席両サイドからのバンダの華々しい咆哮とともにマーラーの描く極彩色の曼荼羅を、最後には世界に一つしかない色合いで創り出すことができました。

連続演奏会2日目となる4日(日)終演後のレセプションでは、ソリストの先生方、合唱指揮の先生方より、様々な感想をお話しいただきました。
「ラーメンに例えれば“澄んだスープ”の栗友会と、“全部乗せ”の武蔵野合唱団」、「文字にできない空前絶後のことをした」、「これを創るために生まれてきたのかもしれない」、「芯に水が届いて、人間ってこんなに感動するものなんだ」…

初日に指揮棒が宙に舞うハプニングに見舞われたマエストロは「初日は一秒一秒が一瞬のようで、2日目は一秒一秒がとても長かった」と振り返りました。

最後には「昨日より今日の方が髪が伸びている。目に見えない成長の中で、人はどんな違いを表現することができるのか」。

すぐには答えを出せない禅問答のような問いかけを受け、私たちは次のステージへ向けてまた一歩、歩み始めました。

演奏会にご来場いただいた皆様、応援してくださった皆様、2日間のステージにご一緒できたすべての皆様に心より御礼申し上げます。
本当に、ありがとうございました。

武蔵野あらかると

 

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